リピート・アフタ・ミー

ちょっとしたバイト?で、週に一度、教授の秘書のようなことをしている。本を借りに行ったりコピー取ったり郵便物出したり原稿の校正したりね。今日がその日だったので、教授の部屋に行った。


開口一番の教授のせりふ:
「アイス食べる?なんか溶けかけてるけど」
「え・・・あ、はい」
五分後:
「ね?溶けかけてるでしょう」
「・・・そうですね」


フォークで食べる溶けかけのアイス。甘いな!


そのあとコピーを申し付けられた。『地球の歩き方:ロシア』。ご旅行かしら?夏のサンクトペテルブルグ。バケーションの甘い響き。いいけどね、別に。助手室でコピーを取っていると、別の教授がやってきた。助手となにやら話し込んでいる。コピーはけっこうたくさんあって(サンクトペテルブルグの箇所を全部)、教授はご用が済んだのか、助手室を出ようとする。その間際。

「きみ、******の?」
え?
よく聞き取れなかった。でも教授はお急ぎの様子だ。去り際だ。
「あの・・・ええ」
にっこり笑って、うなずいた。たぶんなんにも、問題はないだろう。どうせ大したことじゃない。その証拠に、すでに教授はドアの向こうだった。


コピーの続きを取りながら、つらつら考える。ボルシチとか、食べたいな。あ、いや、今のうそ。ぜんぜん食べたくないだって暑いし。そういえば、さっき何訊かれたのかな。コピーもそろそろあと数枚というところで、ようやっと気づいた。

レッツ再生。
「きみ、ロシアに行くの?」
あ、これだ、たぶん。うん、そんな感じだったそう言えば。で・・・はいって言ったな、そう言えば。


かつてない規模の自己嫌悪におそわれた。