実物を見て思い出したこと①

このあいだ演習に出たとき、目の前に座っている人が、すごく変な顔をしていた。顔をしかめてるとか、そういう表情のことでなくて、顔そのものが、すごく変だった。なんだろう、なんだろう、でもあんまりじっと見てると失礼だし。それにしてもすごい違和感だ。そろそろと様子をうかがう。どうやら院生さんらしい彼は先生の手伝いに忙しく、幸い私の注視に気づいているふうではなかった。どきどきしている私に関係なく、演習の割り振りが決められていく。


あ、あれだ。わりとすぐわかった。鼻メガネだ。


あの、年末のパーティシーズンが近づくと売り場を占拠するおもしろおかしい商品の中でも、必ずひとつやふたつは見かける、あれだ。まるい縁のいかにもなメガネに、鼻とヒゲがついてる、あれ。


あれにそっくりだった。


確認しようと思って顔をあげる、と、ヒゲこそないものの、まさに鼻メガネだった。なんかすごい・・・鼻とメガネだった。よくよく見れば普通の顔なんだけど、あまりにも、メガネと鼻の印象が強くて、顔全体を見ることができない。鼻とメガネしか見えない。わらっちゃだめだ。わらったら負けだ。


でもどうにもだめだった。わらっちゃった。鼻メガネの人、ごめんなさい。