おやつはプロテインシャーベット(みかん味)
ねえねえさっき変な夢見たんだよね、と妹が言ってきた。さっきというのは朝でなくて、昼下がりで、つまり妹は昼寝をしていたのであった。そういうあたしも昼頃起きたのであって、彼女がそう話しかけてきたときには、おやつにさつまあげを食べているところであった。姉妹ともに春休み。退屈だ。デートの予定は、ない。
私「で、なに」
妹「夢の中にPさんがでてきたんだけどさあ」
いきなり自分の彼氏のことをもちだされて、少なからず驚いた。妹と彼氏は、それでなくとも十歳以上の年齢差がある。ただ、ごくまれに三人で会うと、話が弾むふうではあった。妹なりに印象深い出会いだったのだろうか。そう思って先をうながす。
妹「Pさんがティーン小説書いてる夢なんだよね」
口の中に入れたままのさつまあげをきちんと飲み下すまで、私は黙った。
妹「折原みとみたいな」
私「じゃなくて」
妹「で、原稿を丸めてゴミ箱に捨てながら、『俺はもうダメだ!』って…」
そんなことを言い、会話をそれ以上発展させることもなく、妹はふたたび布団にもぐった。そうして、母が仕事から帰ってきて夕飯の声をかけるまで、まったく、起きなかった。
娘のたまの帰省を喜んで母が買ってきた海鮮すしを食べながら、私はほほえましく思った。なんだかんだ(具体的にはマッチョマッチョ)言って、妹だって彼を好ましく思っているのだ。なんといっても夢に出てくるくらいだから。深層心理やフロイト的錯誤とは、いっさい、係わり合いがなさそうな夢だけれども。…
食後も妹と話が弾んだ。好きな歌手や、気になっている男の子の話。あまりになめらかに会話がすすむので、私は大事なことを聞くのを忘れた。