猫に会ったけどおやつを持っていないことを告げたらさよならされた

某大学は広い。もちろん、ほかにももっと広大な敷地を持つ大学はたくさんあるけれど、比較的恵まれた方だということを私は知ってる。地元の大学はもっと狭かった。


しかしそれは理系の話であって、構造的にも予算的にも受験生の人気的にもせいぜいがその盲腸程度でしかない文型地区は、とても狭かった。そしてさらに、文学部の盲腸とすら呼ばれている、わが学部(と学府)は。狭いだけではむろんない。一棟をのぞき主要な施設のほとんどがプレハブであり、限られた土地に建て増し建て増しされたせいで、お世辞にも目に優しい風景とはいえない。ちょっと離れたところには文系地区のくせになぜかどう見ても実験系の施設(これもプレハブで同病相哀れむだが)が建っていて、そこにはいつも変なものが捨ててある。R2−D2*1に似た何かとか、赤いソファとか、違う色のソファとか。


だから、それはプレハブだった。ほかに表現のしようがない。建築現場の隣に建ってるやつとほとんど変わらない。正面には板材が大きくバツ印に打ってあって、それはたぶん補強しているんだろうけど、およそ人間の住む建物らしさというものをを壊滅的に損なっていた。こんなところってあったかしらとみなが本気で思うような、大学の奥の奥、猫のトイレにしかならなさそうな敷地に立っている。おざなりなかんじでコンクリートブロックが敷地を区切っている箇所があり、そこは花壇のつもりらしかった。むき出しの地面に菜の花が揺れている。


どこの、共産圏、だよ、と、心の中で呟いた。ゆっくりと、ブレスを入れて言ったところで大筋は変わらない。扉部分(ガラガラって開くやつ)には「院生控え室(仮)」と書いたA4プリント紙が貼ってある。ええ、(仮)ですとも、そうでしょうとも。だってここ、ふだんはプレイルームとして使ってるところですもんね?あたしたちがここに詰めてたらセンターに通ってる子どもたちがここで遊べませんものね。え、あ、違うの?(紙面をよく読む)私たちが出て行けってことですよね。


他人の精神的健康を維持・増進することを生業とするために勉学に励む若き学徒たちを待ち受ける、これが現実なのだった。


いや、大げさに言ってみたんですよ。ブロックの上に腰掛けてお弁当食べたらおいしいって友達も言ってたしさ。

*1:スターウォーズ。別に好きなわけじゃないのに、いろんなものをよくこれと見間違う。新種の掃除機とか、名島橋の電灯とか。