みみなり

2、3日まえから、耳の調子がよくない。ひっきりなしに工事の音みたいなのがずっと聞こえている。差し込まれるような低音で、寝起きが一番ひどい。なんだっけこれ、なんていうんだっけこういうの・・・幻聴?


「なんか幻聴があるんだよね」と友達に言ってみた。面接室やなんかを掃除しているときに。雑巾をしぼりながら。
「ああ・・・幻聴ね」と友達。「それってかなり病態水準重くない?」と別の友達。
「そうかな?・・・まあ疲れてるとは思うけど・・・」誰だって疲れるだろうこのスケジュールじゃ。今日も夜の九時まで休みはないわけだし。耳を軽く叩いてみる。治らない。
「カウンセリング行きなよ。うちの相談室じゃ薬は出せないわけだしさ」
「え?薬?耳鼻科じゃなくて?」
「いやでも知らなかったな。こんな身近に臨床例が」


「ちがうってば」


いやだな臨床心理専攻の院生ってこれだから!
ここに至ってようやく、自分が呈している症状が「幻聴」でないことに気付いた。つまり、私の耳は連続する重低音みたいなものを拾っているのであって別に「おまえを殺してやる」とかそういった文意を持った言葉が聞こえているわけではない。


でもあれ、なんていうんだったっけ、ほんとに。